みなさん、こんにちは。
先日、テレビを見ているとマグネシウムを洗濯機に入れるだけで洗濯ものからにおいが消えるという商品が紹介されていました。(マグちゃんという商品です。)
忙しい主婦の方に大人気だそうです。
こう見えても一応、阪大で化学を学んでいる人間なので本当にそんなことがあり得るのかと疑問に思い、少し考えてみました。
あくまで考えてみただけで実際どうかはわかりません。
こんなやつです。
テレビで紹介されていたマグちゃんっていうのがやはり1番売れてる商品らしいですよ。
- そもそもどんな反応が起きているの?
- 洗剤と何が違うの?
- 洗剤に勝てるのか?
- 洗濯機に入れるだけで理論値に近い値は出るのか
- マグネシウムでも汚れは落とせるが……
- もっと効率的に落とすために……
- 終わりに
- [追記]そんなに手間かからんのじゃね?
そもそもどんな反応が起きているの?
おそらくこのような反応により汚れを落としているのだと思います。
Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2
この Mg(OH)2 は溶解度積がおよそ 1.2×10-11 であり水の中で電離し、pH10.5程度を示します。
意味が分からない人もいると思うので簡単に言えば、マグネシウムという金属が水で溶けて、イオンになって、アルカリ性の水に変えるということです。
アルカリ性になると汚れが落ちるのかという話をしましょう。
某CMで知っていると思いますが、石鹸は弱酸性のほうが体に優しいです。あれは、人間の体が弱酸性なため、アルカリ性だと表面の構造を破壊してしまいますが、弱酸性であれば体にとても近い状態であるから破壊しなくて済むというわけです(まあ、つまりはアルカリ性のほうがよく落ちるといううことですが……)。
さて、服にこびりつくにおいとは一体何でしょうか。たいていの場合は人間の皮脂のにおいでしょう。つまり、この皮脂を分解してやればいいということになります。
先ほど言いました通り、人間の体は弱酸性であるため、皮脂も弱酸性です。そのため、アルカリ性の水と中和反応して、分解されます。それにより油脂が水に溶けるなり、衣類から離れたりすることで皮脂が消えて、においも消えるのでしょう。こんな仕組みなのではないかと思います。
洗剤と何が違うの?
石鹸にはいろいろなものがありますが、一般的には親水基と疎水基の両方を持つ化合物であり、水溶性であり、水溶液はアルカリになるようなものが多いのではないかと思います。
石鹸の仕組みも簡単に説明しておきます。石鹸も水をアルカリ性にしてまず皮脂を破壊します。
皮脂というのは油ですので水には溶けません。そこで石鹸の疎水基がポイントになります。疎水基というのは水と仲が悪く、油と仲良しな部分と思ってもらえばいいと思います。なのでこの子たちは水の中より油の中に行きたがります。そのため、皮脂の中に入ろうとします。これにより、皮脂は疎水基に囲まれる形になります。
さらに、この石鹸の中の化合物は親水基も持っています。親水基というのは水と仲良しな部分と思ってもらえば結構です。そのため、水のほうに行きたがります。
これらを総合的に考えると、皮脂に疎水基が刺さり、外に親水基が向いた塊が誕生してますね。この塊の外側は親水基なので水に溶けます。つまり、皮脂が水に溶けるという状態になったわけです。
(すいません。この辺は高校化学で習った記憶を頼りに書いているので間違っていることも多いかと思います。)
このことを考えるとマグネシウムは単に皮脂を破壊するだけなのではがしきれない部分も多いように思われます。では、どうしてそんなに落ちるといわれているのでしょうか?
洗剤に勝てるのか?
洗剤との違いを考えるとかなり厳しい気がしますが、少し踏み込んで考えてみます。
洗剤よりアルカリ性具合が高ければ洗剤よりきれいになるチャンスがあります。洗剤のpHはいろいろな種類がありますが、中性洗剤ならもちろんpH7の中性です。さて、弱アルカリ性洗剤の場合はどうでしょうか? 高校生の頃に洗剤のpHを測ったことがあるのですが、たしかほぼ中性だったはずです。気持ちアルカリによっているようなそんなレベルです。原液はpH9程度だったと思います。
さて、マグネシウムはどのくらい行くのでしょうか?
これは上に書きましたね。理論的にはおよそpH10.5なので、マグネシウムの勝利です。
少し希望が見えてきたか??
洗濯機に入れるだけで理論値に近い値は出るのか
さて、pH10.5が出せればもしかすると勝てるかもしれないという状態のマグネシウムですが、この値は出るのでしょうか?
少し難しいような気がします。
なぜかというと、マグネシウムは空気中で酸化し、皮膜を作ってしまうからです。皮膜ができてしまうと反応性は悪くなります。簡単に言えば、マグネシウムの周りに膜ができて水と出会いにくくなるということです。つまり、十分にアルカリ性にすることができないのではないかと思われます。
ただ、まだあきらめるのは早いです。
MgO+H2O→Mg(OH)2
このような反応があります。MgOはマグネシウムについてしまった皮膜です。このような反応があります。この反応は発熱反応なのでちゃんと進むと思います。この反応が進めば、膜である酸化マグネシウムが溶けます。さらに、お目当てのアルカリ性の水溶液も手に入り、周りの皮膜も溶けたことで中身のMgを水と反応させることができます。
マグネシウムでも汚れは落とせるが……
先ほどまでの話で汚れが落とせそうだという結論に至りましたが、少し厄介なことが…… 酸化マグネシウムの反応があまり進まないのではないかということです。実際調べてみないとわかりませんが、おそらくそんなに早くはないです。そのため、少し前から水につけておく必要があると思います。それさえしてしまえば反応はおそらく進んでくれるので無事マグネシウム洗濯でも汚れが落とせましたということになります。
もっと効率的に落とすために……
さて、今のままではかなり時間がかかってしまいそうな予感です。少しでも早く洗濯を終わらせたいという方がほとんどだと思います。ひと手間加えるだけで早くなると思いますのでそれを紹介します。
とりあえず、時間がかかるのは酸化マグネシウムを反応させて溶かすことです。
こいつを何とかすればいいんです。簡単な話です。酸をかけて周りの皮膜を無理やり溶かしてしまえばいいんです。
身の回りのものなら酢を水に薄めたりしたらいいんじゃないでしょうか。それに少しつけておいて、使う前に軽く水洗いをして、洗濯機にぶち込む。これで比較的きれいなマグネシウムを使えるのでしっかりと反応が進み汚れが落ちると思います。
ただ、先ほども言いましたが、マグネシウムだけではアルカリ性にするだけで洗剤に比べて汚れを浮かすような効果が少ないです。
この問題も簡単に解決できると思います。それは少し洗剤を入れるということです。アルカリ性にできているので基本的な汚れは自然に浮き、取れにくいものは洗剤がとってくれるような状態になるのではないかと思うんです。まあ、ケチャップみたいながんこなものはさすがに無理があると思われますが……
終わりに
たまには化学専攻らしい話をしようと思って話をさせてもらいました。ただ、この話はあくまで僕の想像なので実際どうかは検証してみないとわかりません。反応式も正しいと保証ができません。なんせ本当に頭にある知識だけで書いたので……
マグネシウムはなくなるまでずっと使えると思うのでかなりお財布にやさしそうですね。
なんか、Amazonの説明を見ていると300回しか使えないみたいなことが書いていましたが、それはなんでなんでしょうかね……酸化マグネシウムになりすぎるみたいな理由なら溶かせば問題ないように思いますが…… 内部まで酸化しちゃうんですかね。
また、写真を見るとかなり大きめの粒子だなと。おそらく表面積をできるだけ減らして酸化マグネシウムになりにくく、かつ程よくアルカリになってくれるようにということを考えるとあのサイズになるのでしょう。細かくすればより反応性上がって汚れ落ちるとは思いますが、減るスピードもやばそうです。
ということで、結論としましては、正しく使えばきれいになってめちゃめちゃエコということでございました。
とりあえず、僕も買ってみて本当に落ちるか検証してみようと思います!
なんか売れまくってて、いずれ高騰しそうなのでそろそろ買わないと…… と思っているんですが、今お金がなくて…泣 早く試したいのに……
[追記]そんなに手間かからんのじゃね?
レビューを読んでいると効果を実感しているとが多いようです。
1つ考慮し忘れていたのですが、マグネシウム同士がぶつかることで酸化被膜が削れて内部に水が入り、反応するのではないかと思いました。そのため、回し出せばある程度反応してくれるかもしれません。
そうであっても僕の言ってることは概ね間違っていないかと(信じたい)
多分、長くつけておいたり、酸で処理したり、洗剤と組み合わせて使うと効果があがるのも確かだと思います。
よくできた商品なのかもしれませんね。よくこのアイデアをここまで商品にしたものです。